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行方不明者問題について 

平成22年4月13日

フランス人ジャーナリストのレナ・モージェさん、カメラマンのステファン・ルメルさん、ベトナム在住のジャーナリストで今回、コーディネーター兼通訳を担当して頂いた森淳さんからの取材訪問を受けました。

今回の訪問の目的は、日本での行方不明者の動機や原因および捜索活動などを取材し「日本の文化や日本社会の現状などを知りたい」とのことでした。

当協会からは事務局の古内と林崎が応対に当たり、約3時間の対談が行われました。

当協会からは主に当協会の活動とその趣旨および日本の行方不明者数、行方不明者の最近の傾向、具体的なケースなどについて話しました。

以下は主な内容です。

・当協会の活動趣旨
1)当協会は行方不明者の問題を各家庭、各個人の問題ではなく社会問題の一つとして考えている。

2)行方不明者に関しては、特に以下の行方不明者の早期発見とその後のケアが必要であり、社会を構成する行政、地域、企業、住民が協力体制を構築することが必要と考えている。
 
①「高齢化社会に伴い増加している認知症高齢者の行方不明」
②「うつ病患者の行方不明者」
③「自殺場所を探すための行方不明者」
④「未成年者の行方不明者」

3)残された家族に関しては、生死が判然としない行方不明者を抱える家族の不条理感を軽減させるための様々な支援(専門家によるカウンセリング・行政への手続方法の助言、法律問題への助言など)

4)行方不明者問題が社会問題であるならば、行方不明者捜索に関わるコストを社会が負担出来るようなシステムの構築。


・日本の行方不明者総数と最近の傾向
1)日本の行方不明者の総数(警察への捜索願いの提出件数)は 毎年、10万人前後プラス・マイナス2万人程度の数であるが、当協会への相談内容を検証すると行方不明者の動機に変化が見られる。

2)以前の行方不明者の動機は借金苦、生活苦、結婚問題、夫婦間の問題、不倫問題などが原因と考えられるケースは多かった。
これは、新たな生活を行うための『前向きな行方不明(当協会の分類)』である。

3) ここ数年は、長期に渡る不景気による失業・就職難などの理由 が増え、所謂ネットカフェ難民の増加とも関連性が考えられる。

4) 失われた10年とロストジェネレーション世代に無目的な失踪が増えている。また、この世代の特徴として、相談できる友人や知人が少なく、独身者であり、厭世感が強い者やうつ病を患っている者は「死ぬ場所を探す目的での家出」を行い、自傷、自殺に至るケースが増えている。
日本では、自殺者が10年以上にわたり、3万人を超えている。
自殺を食い止める為にも、行方不明者の早期発見が必要である。

5) 高齢化社会に伴い、認知症高齢者の行方不明者が増えている。


・具体的なケース
1)発見・保護されたケース(3例)
2)遺体で見つかったケース(2例)
3)未発見のケース(2例)


・次に、レナさんから頂いたフランスでの行方不明者問題に関するお話の概要は以下のとおりです。

1)フランスの行方不明者の総数は年間で1,000人程であり、特徴としては成人の家出は少なく、未成年者の行方不明が多い。

2)未成年者などの行方不明者は犯罪に巻き込まれているケースが多く、特にレイプ、性犯罪などに巻き込まれているケースが多い。

3) 大人の家出では、夜逃げの様な逃亡のケース(新たな生活を行うための『前向きな行方不明』)は少ない。

4) 捜索の手段としてTVなどのメディアを利用しての情報公開も盛んであり、多くの事案が解決している。

5)民間の団体が捜索支援を行うケースも多い。その場合には、各行方不明者毎に捜索支援団体が立ち上げるケースもある。

*これは、家族の家出や自殺に「後ろめたい感情を抱かない」や恥の感情を抱かない」文化的土壌の違いもあると思われる。

*また、情報を公開することは、行方不明者の家族同士が精神的なケアの為に交流を行う際も有効である。

*行方不明者を持つ家族も、自殺者の家族、犯罪被害の家族と同様に大きなストレスを受けるため、精神的なケアは必要である。

6)フランスはEU加盟国であり、スペイン、イタリアなどの他の国と国境を接しているが、行方不明者が国境を跨いで、他の国に行く事例は少ないと思う。殆どが国内で解決していると思う。

7)自殺者は増えており、自殺者の家族と同様に行方不明者の家族も自責の念を抱えている。


上記のとおり、主な日本側とフランス側の行方不明者問題に関する相違は、①「行方不明者の総数と動機」②「行方不明者に関する情報公開」だと考えられる。

①に関しては、フランスの統計を入手し、再度、検証する必要があるが、総数と動機の差異を様々な角度から検証する必要があるだろう。

②に関してはフランスの行方不明者が犯罪に巻き込まれているケースが多いとの話から、事件として行方不明者に関する情報が公開されているとも考えられ、その点は日本の行方不明者問題と違いがあるとも考えられる。

しかし、現在の日本で増えている「高齢化社会に伴い増加している認知症高齢者の行方不明」、「うつ病患者の行方不明者」、「自殺場所を探すための行方不明者」、「未成年者の行方不明者」に関する情報を公開し、早期発見のシステム構築は、日本の社会問題である高齢化、自殺者の増加に対処するために必要なことであると考えられる。


*当協会では、「高齢化社会に伴い増加している認知症高齢者の行方不明」、「うつ病患者の行方不明者」、「自殺場所を探すための行方不明者」、「未成年者の行方不明者」の早期発見のために、行方不明者の移動手段である電車、バス、タクシー会社と協力を行っております。

現在、ご協力頂いている会社様は、次のとおりです。

★東武グループ日光交通株式会社様 
★東武鉄道 日光駅様

電車、バス、タクシー会社様のご協力をお待ちしております。

事務局長 古内