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そして高級時計のこれまでとこれからを自らの言葉で、本音で語る。

加熱気味だった時計市場、そして魅力的なブランド、時計に対する考えとは?
誕生から5年の月日を経たショパールのアルパイン イーグルコレクション。そのコレクション開発の発端であり、キーマンでもあるカール-フリッツ・ショイフレ氏が、父で共同社長のカール‐フリードリッヒ・ショイフレ氏と共に2024年10月下旬、来日を果たした。カール-フリッツ氏は今回が初めての日本だそうだ。これまでなかなか聞くことができなかったアルパイン イーグルの舞台裏や、現在の状況について事細かに伺うことができた。さらには公の場でほとんど語られることがないような際どい質問に対しても、隠すことなく本音で答えてくれた。そういった意味でも、今回のインタビューは実に貴重な内容であるため、ぜひ最後まで読み進めて欲しい。


左はショパール共同社長のカール-フリードリッヒ・ショイフレ氏。右は息子のカール-フリッツ・ショイフレ氏。彼はショパールのオーナーファミリー5代目を担う予定で、アルパイン イーグルプロジェクトを推進したキーマンであり、今ではプロダクト開発にも積極的に関わりはじめている。


インタビューの際にカール-フリードリッヒ・ショイフレ氏がつけていたのは、L.U.C 1860 フライング トゥールビヨン! その魅力についてはHands-On記事「ショパール L.U.C 1860 フライング トゥールビヨンは28年を費やし完成したタイムピースだ」をご覧いただきたい。


そしてカール-フリッツ・ショイフレ氏がつけていたのは、Cal.1.96を搭載した初代のL.U.C 1860だった。こちらもショパールを語る上で欠かすことのできないタイムピースだ。その魅力は記事「Cal.1.96を搭載した1997年製初代ショパールL.U.C.1860との邂逅」のなかで紹介している。

スーパーコピー時計 代金引換優良サイトカール-フリッツ氏がアルパイン イーグルを語る
佐藤杏輔(以下、佐藤)
アルパイン イーグルのローンチから2024年で5年目。いまやショパールを代表するコレクションのひとつに成長しましたが、今どんな気持ちですか? 当時と今とで何か考えに変化はありましたか?

カール-フリッツ・ショイフレ氏(以下、カール-フリッツ氏)
 2019年の発表当初からすごく反応はよかったですね。その後すぐにコロナ禍に見舞われましたが、2020年のセールスもよかった。アルパイン イーグルは世界的にも成功を収めたモデルのひとつと言えます。日本はとても好きな国ですし、特にそんな場所で大きな成功を収めることができたことをとてもうれしく思います。日本のお客様は知識も深いですが、アルパイン イーグルがこれだけ受け入れられている、よく売れているということはブランドにとってもいいサインです。

 付け加えるとしたら、アルパイン イーグルがあったからこそ、ショパールが備えるメンズウォッチの作り手としての一面に目を向けていただくことができたと思います。日本を含めたほかのマーケットでも、これまではショパール=ハッピースポーツ、ムービングダイヤモンドなど、ジュエラーとしての側面が注目されてきました。アルパイン イーグルによってメンズウォッチ、さらにはL.U.Cコレクションへも注目が波及して新たな顧客層を開拓してくれていることは非常に大きな意味を持っています。ショパールにとってアルパイン イーグルは、新しい顧客コミュニティ、特に若いお客様のコミュニティ形成を助けてくれるモデルです。

佐藤
メンズウォッチとしてのショパール、そしてL.U.Cコレクションの認知度が上がり、さらには若いコミュニティにアプローチできたということですが、それはアルパイン イーグルのローンチ当初から意識していたのでしょうか?

カール-フリッツ氏
 もちろん発表(アルパイン イーグルの)によって新しい顧客層を開拓できるとは考えていましたが、そうした方たちがL.U.Cなどほかのコレクションにも興味を持ってくれるということまでは想像していなかったですね。L.U.Cは今となっては約30年前からあるコレクションですが、実はそれほど広くは知られていませんでした。ですが、若いコレクターの方々がアルパイン イーグルを通じてL.U.Cの存在を知り、コレクションに対する理解を深めてくださっています。これは予想していなかったうれしい発見です。


2024年の新作として発表されたアルパイン イーグル 41 XP TT。超薄型でチタン製、かつオープンワークのL.U.Cムーブメントを搭載した薄くて驚くほど軽く、スポーティでエレガントな二面的魅力が同居している。

佐藤
アルパイン イーグルには、伝統技術と先端技術、スポーティとエレガンスといった二面性が巧みに同居していると感じます。アルパイン イーグルのコレクションにおいて大切にしていることは何ですか?

カール-フリッツ氏
 おっしゃったようにアルパイン イーグルは、一見相反する要素がうまく融合した時計だと思っています。それら(伝統技術と先端技術や、スポーティとエレガンス)は互いを打ち消し合うわけでは決してないんですね。私たちはそれらの両立は可能だと考えています。

 現代の人々のライフスタイルに合わせると、さまざまな状況に応じて時計をつけ替えられる人ばかりではありません。オフィスでつけていても、あるいは水泳やスキーといったレジャーシーンにつけても、常にその場にあった時計であり続けるような普遍性のある時計を作りたいというのが原点にあり、それを実現しているのがアルパイン イーグルだと思っています。

 たとえばアルパイン イーグル 41 XPSはL.U.Cのムーブメントを搭載していて、どちらかといえば薄くてエレガントな時計ではあります。(モデルによっては)エレガント寄り、スポーティ寄りといったことはあるにしても、基本的にはどちらの要素も持っていて、どんなところでも使える時計であるのがアルパイン イーグルの良さです。

 時代にとてもフィットした時計なのだと捉えています。最近はテーラーメイドも復活してきていたり、身につけるものの状況はどんどん変わってきていますが、今の若い方たちはテーラーメイドのスーツにスニーカーやヴィンテージウォッチを合わせてみたり、ヴィンテージのスーツを着てアルパイン イーグルをつけたり、自由に皆さん楽しんでいらっしゃいますね。楽しみ方が多様になっていると感じます。先日もアルパイン イーグルをつけているお客様とディナーをしたのですが、黒い服、白いスニーカーというモノトーンスタイルにモンテローザピンクの41 XPSをつけたアバンギャルドな雰囲気の方もいれば、エレガントなスーツにスポーティなアレッチブルーのアルパイン イーグルをつけている方もいて、お客様自身も先ほど言ったような二面性を上手に取り入れてつけている印象があります。


この時計もショパールの2024年新作として発表され、業界関係者を中心に高い評判を得たL.U.C カリテ フルリエだ。どんな時計であるかについてはHands-On記事「ショパール L.U.C XPSとL.U.C カリテ フルリエを実機レビュー」にて詳しく紹介している。

佐藤
メディアや時計愛好家のあいだで、近年の、特に新作のL.U.Cコレクションを高く評価する声が聞かれます。コレクションに対する世界的な評判はどのようなものですか?

カール-フリッツ氏
 過去4、5年ですが、L.U.Cコレクションはさまざまなマーケットで注目を集めてきました。たとえばミニッツリピーターを搭載したL.U.C フル ストライクが登場した時、あとは初代L.U.C 1860 スティールモデルの復刻版が出た時など、 特定のタイミングでコレクションの認知度が高まったと思っています。それによって評価も世界的に高まってきたのではないでしょうか。

佐藤
年々注目される状況にあると考えていらっしゃるということですね?

カール-フリッツ氏
 とてもいい質問、かつ難しい質問だと思います。ショパールはメンズウォッチの作り手として注目されるようになりましたが、正直なコレクターや、忌憚のないご意見をくださる方は3、4年前までL.U.Cコレクションを買おうと思わなかったし、メンズウォッチを作っているということも実は知らなかったというコメントをくださる方もいらっしゃいました。メンズウォッチも作っているとことに対する認知が高まったという意味でも、大いに注目を集めていると言っていいのではないかと思います。

カール-フリードリッヒ・ショイフレ氏
 1996年にフルリエのマニファクチュールを設立した際、メンズウォッチも作っていることを認知されるには少なくとも10年、そしてその重要なプレイヤーであると思われるには、さらにもう10年かかると考えていました。ジュエリーウォッチやレディスウォッチはすでに広く認知されていましたが、メンズだけがあまり知られていないということが実態としてあったのです。ある有名なウォッチジャーナリストの方が“L.U.Cは隠された秘宝だ”、“時計業界の秘宝だ”ということを冗談でおっしゃっていましたが、これまで隠れていた部分が明らかになって、ブランドの新たな魅力に気づいてくださったという意味では、そのとおりだと思います。

佐藤
2024年は例年以上にアルティザンの魅力について積極的にコミュニケーションされていますが、ショパールにとってアルティザンに対して、どんな考えをお持ちですか?

カール-フリードリッヒ・ショイフレ氏
 アルティザンがいなければ、魅力的な時計もジュエリーも作れません。彼・彼女たちがいるからこそできることがたくさんあるのです。メゾンとしては、アルティザンやクラフトマンシップこそ最も注目を集めるべきポイントになってくれたらいいと思っています。現在、社内では40種類以上の技法を持つアルティザンたちが製品を手がけています。そうした技法が世の中から失われてしまえば、当然この先は作れなくなってしまいますので、もっと多くの方にアルティザンの魅力を知ってもらい継承していくということは、私たちはもちろん、時計業界としても積極的にアピールしていきたいですね。こうしたアルティザンの持つ技法というのはお金で買えないものです。私たちとしてもできる限りのコミュニケーションをしていきたいと考えています。


金を鋳造するゴールドファウンドリ(金鋳造所)を持ち、社内で金ののべ棒の状態からケースやジュエリーに使用するゴールド素材の鋳造を行なっているブランドは時計および宝飾品業界でも数少ない。ショパールのほか、ロレックス、パテック フィリップ、ウブロなどごくひと握りのブランドに限られる。

佐藤
ショパールは100%エシカルゴールド、リサイクルスティールの使用など、サステナビリティや責任ある調達ということに積極的に取り組んでいます。こうした取り組みはショパールにどんなことをもたらすとお考えですか?

カール-フリードリッヒ・ショイフレ氏
 サステナビリティへの取り組みは、私たちに限らず、多くのブランド、特に経営陣の方々が話すトピックのTOP3には必ず入ってくるというぐらい、みなさん考えていらっしゃいます。お客様もやはりブランドに対してそういうものを望んでいると感じていますし、ときに政府や国の方針として提示され、そこに合わせていく必要もあると思います。

 ほかのブランドに先駆けて動くことができれば、その業界に対して早い時期からとてもポジティブな影響を与えることができる。そうした考えに基づいて、ショパールではまずは素材として、エシカルゴールドの導入を始めたのです。ルーセントスティール™(リサイクルスティール)においてはアルパイン イーグルから導入し、徐々にほかのコレクションでも増やしていくことで、2028年までにその90%以上をリサイクルするという目標を掲げました。できもしないことをただ発信するのではなく、できること、自分たちが到達できる目標を立ててしっかりと取り組み、チームとして全力を尽くすことが大事だと私たちは考えます。それをきちんとフォローアップすることで、お客様が求める透明性や、トレーサビリティというところに繋がっていくのではないでしょうか? 何らかの利があるからではなく、できることがあるならばやっていこうということですね。

メゾンが示す、ショパールの魅力と高級時計のあり方
佐藤
多くの時計を趣味にする人々にとって、所有する時計を手放して新たな時計を購入することは一般的です。時計趣味を続けるためにも価値が目減りしにくい時計というのは重要ですが、そうした時計にどんな考えをお持ちですか?

カール-フリードリッヒ・ショイフレ氏
 哲学的な話になってしまうかもしれません。“なぜ人は時計をコレクションするのか”、“なぜヴィンテージウォッチがいいのか”、あるいは“なぜ人は時計を買いたくなるのか”ということ突き詰めていくと、この3年ぐらい、コロナ禍を主として時計を投資として捉えるという考えがありました。家にいる時間が増え、さまざまなことを調べる余裕ができたことを背景に、転売して値段が釣り上がったものをまた売買するということが注目を集めました。

 でも本来時計を買うという行為には、やはりクラフトマンシップや伝統であったり、自分なりにこの時計が好きだと思う理由、長いあいだ楽しむために手にしたいという気持ちがあると思うのです。コレクターのみなさんも、自分が本当に好きだったもの、好きなポイントは何だったかを振り返ると、作るのに要した時間であったり、時計の存在自体が希少だったり、そうしたところに価値をみいだしていたのではないでしょうか? この数年の流れはやはり異常でしたが、それがようやく落ち着きつつあります。時計をまた選ぶことができるようになってきたと捉えていますが、ショパールにとっては変わることなく、先ほどからお話ししているクラフトマンシップや、完成までに要した時間、伝統や技法という要素がしっかりある時計、品質の高い時計こそが、本質的に価値が目減りしにくい時計ではないかと考えています。


ジュネーブ州メイランにあるショパール本社内には大規模なショパールミュージアムが併設されている。フルリエのL.U.CEUMは時計の歴史が包括的に学べるような展示内容だが、こちらはショパール、そしてショイフレ家による140年以上の歴史にフォーカスしている。画像は2023年公開の記事「ショパール マニュファクチュール、そしてメイランの本社ファクトリーに潜入」より。

佐藤
過去製品のリバイバルや同じコレクションを長く作り続ける、あるいは過去の自社製品をオークションで買い戻したりするなど、歴史あるブランドではブランドの価値付けを積極的に行っています。これらについてどのような考えをお持ちですか?

カール-フリードリッヒ・ショイフレ氏
 ショパールではこうしたこと、つまりブランドの価値付けと同様のことが自然にできていると考えています。私たちは自身のミュージアムを所有しており、ある時期のものが足りない場合はやはり自社製品を買い戻したりもしますが、近年はとても高額になる傾向がありますね。私の父(現会長のカール・ショイフレ氏)の時代は、今と同じ規模のミュージアムを作ることよりも、目の前にある新しい製品を作ることに力を入れていました。ヘリテージや歴史が持つ価値に多くのブランドやお客様が注目し始めたのは、本当に最近のことだと思います。

 私は古い懐中時計、息子は1960〜80年代のヴィンテージウォッチに興味がありますが、それぞれ興味があるものは違っています。クルマもそうですね。私は第2次大戦前の30年代〜40年代、彼は80年代〜90年代のクルマと、興味の幅というのは変わってくるものです。

 今の時代はクラシックやヴィンテージが、より注目を浴びていると思います。リ・エディションとしてヘリテージの素晴らしいものを活用したいとは考えますが、リ・エディションを出す場合には必ず自問自答しなければいけません。どんな新しい側面や要素を加えるべきかということです。ただ単に同じものを少し手直しして出すのではなく、オリジナルを持っておられる方がリ・エディションも買いたいと思ってくれるかどうか。新しくておもしろいと思われるようなものをリ・エディションとして出すことにこそ、真の価値があると思うのです。リ・エディションはコピーではありません。再解釈するということ、新たねおもしろいと思える何かが必ず加わらないと意味がないのです。


メイランのショパール本社にあるファクトリー内ミュージアムには、古い懐中時計なども展示されている。


ユニークなスタイルを持った、ムービングダイヤモンド。こんなモデルもかつては存在していた。

佐藤
ときに市場で人気のブランドというのは時代によって変わることが珍しくありません。ショパールが考える、常に人々に愛されるブランドにとって大切なこととは、どんなことだとお考えですか?

カール‐フリードリッヒ・ショイフレ氏
 ブランドに限らず、さまざまな機関、学校やレストラン、ホテルなどにおいても一緒で、人々、お客様の興味を維持し続けるためには、そこにしかない、替えの利かないサービスや完璧なクオリティをずっと提供し続けることしかないと考えています。常に新しいお客様を引きつける、若さのようなものを必ず商品に入れて出し続けていくことがとても大事なのです。どんどんお客様の世代や時代も移り変わっていくわけですが、必ずしも皆が同じものに興味があるわけではありません。好みや品質などについてコミュニケーションやバランスを取りながら飽きられないように、でも既存のお客様も大事にしながら常に完璧なもの、ほかのブランドが出せないものを出し続けていくということは、難しいことではありますが常に愛されるためには必要なことだと思うのです。

 今回、日本へのフライトのなかで見た映画はとてもいい例でした。その映画はチューリッヒのレストランが舞台で、歴史があり、今も人気の伝統あるレストランの話でした。そのレストランは3世代で通うお客様も多いような、世代を超えて愛されるお店なんですね。その店が提供しているものは料理もそうですが、変わらないよさ、そこでしか味わえない体験を得るためにお客様は通っているようでした。微調整はしているのですが、メニューは創業からずっと変わらず、とても質の高いものをお店の個性として提供しているというところが人気の理由なのでしょう。

トレンドサイクルというものはどの業界にもあり、口コミ第1位のパネライスーパーコピー 代引きブランドとしてもある程度取り入れることはもちろん大事ですが、それにとらわれすぎてしまうと、ブランドとしてのユニークさや個性は失われてしまいます。お客様が私たちに求めているもののなかには、クラフトマンシップやクオリティの高さであったり、そのレストランと同じように変わらないよさもあると思います。そうしたところはこれからも大切にしたいですね。


今回が初来日となったカール-フリッツ・ショイフレ氏。彼にはインタビューの最後にこんな質問をぶつけてみた。

“アルパイン イーグルの新作に関して、お父さんと意見交換はしている?” すると彼はこう答えた。

「もちろん! 父にはうるさいと思われているかもしれないですが(笑)。毎週のように新作の話をしていますよ。私が時計に興味を持ち始めたのは年齢的に少し遅かったですが、いったん好きになるとのめり込むタイプで、今はヴィンテージウォッチが特に好きですね。父もそれをよく知っていて、私がどんなアイデアを持っていて、どんな時計をつくりたいと思っているかを理解した上で、日々ディスカッションをしています」

 3世代が紡ぐストーリーとして始まったアルパン イーグルの開発。そのストーリーは今も広がりを見せながら、現在進行形で続いているようだ。

近年のロレックス新作のなかでも特に話題をさらったモデルをふたつ揃えて紹介しよう。

ロレックス、チューダーの新作リリース取材の準備を進めていた。そのとき誰かがロレックスの公式サイトをチェックし、すぐにデイトナのページへ飛んだ。そして驚くべきことに、ホワイトゴールド(WG)仕様の“ル・マン” デイトナ Ref.126529LNが消えているのを発見したのだ。ベンはすぐさま携帯を取り出し、これまで築いてきた人脈のなかからとある携帯番号にメッセージを送った。そして戻ってきた返事は次のとおりだ。「あなたが所有している仕様のデイトナは生産終了になりました」。さらに「それ以上におもしろいモデルが登場します」という情報も聞かされた。それから数カ月が経ち、ついにその“おもしろいモデル”が何なのか判明した。それがイエローゴールド(YG)仕様のデイトナ “ル・マン” Ref.126528LNである。幸いなことに、両モデルを同じ場所に集めて写真に収めるのにはほんの9カ月ほどしかかからなかった(皮肉だ)。

Rolex "Le Mans" Daytona 126528LN and 126529LN
ロレックス デイトナ ル・マン Ref.126529LNを1週間徹底レビュー

デイトナ ル・マンのオリジナル仕様について、オーナーの視点からベン・クライマーが深く考察している記事は必読だ。

WG仕様のデイトナ “ル・マン” Ref.126529LNはロレックスの歴史のなかでも屈指の話題作となったが、その寿命は1年にも満たなかった。昨今のロレックスとしては異例の短期間で姿を消したモデルだ。そして次に話題を集めたのは、その短命の話題作と基本的には同じだが似て非なるもの(YG製のル・マン)であった。両モデルはシルバーのインダイヤルに特徴的な“ロリポップ”型のマーカー、セラミック製ベゼルの赤い“100”表記、シースルーケースバックなど、共通のデザイン要素を備えている。しかしYGモデルはWG版とは異なり、公式サイトに掲載されることもなくカタログ外でのリリースとなった。そしてロレックスは、このモデルのHands-On取材を許可する気はまったくなかったようだ。どれほど丁重にお願いを重ねても、この9カ月間一度も実現しなかった。

Rolex Le Mans Daytona Yellow Gold 126528LN
カタログ非掲載モデル、ロレックス デイトナ “ル・マン”のYG仕様ことRef.126528LN。

正直なところ、最信頼性の日本ロレックススーパーコピー代引き専門店!WG仕様の“ル・マン”をオーナー視点でレビューしたベンのA Week on the Wristに私から付け加えるべき新たな情報はほとんどない。この時計のスペックを見てみると、直径40mm、厚さ12mmで、2023年に登場したデイトナの新型ムーブメントCal.4132を搭載している。しかしYG仕様には特別な魅力がある。私がWG仕様の“ル・マン”で気に入っている点、すなわち控えめな佇まいと、ステンレススティール(SS)に見紛う外観はこのYG仕様ではすべて覆される。こちらはより大胆で、派手で、圧倒的な存在感を放つモデルだ。

Jack Road Daytonas
親しい友人なら、こんな低品質な携帯写真を撮らせることはないはずだ。本当に申し訳ない。でも少なくとも、隣り合わせの2本の“ル・マン”を初めて目にした瞬間の記憶をこうして証拠として残せたのだから、それだけで十分だと思う。

これはあくまで個人的な印象だが、新作のRef.126528LNのYG仕様は先代のモデルよりも流通しているように感じる。初めてこの時計を目にしたのは、2024年9月に東京・中野のジャックロードというショップでWG仕様の“ル・マン”と並んでラップに包まれた状態で展示されていたときだった。そのときの価格は5500万円ほどで、約36万ドルに相当する(ちなみにWG仕様の価格は3280万円、約21万ドルだった)。この価格はかつての“レインボー”デイトナ(多くの人にとって憧れのカタログ外モデル)とほぼ同じ水準である。その後、UBSのハウス・オブ・クラフトイベントで別の個体を目にし、さらに10月にはシンガポールで開催されたIAMWATCHでも見かけた。そして最終的に、このYG仕様の“ル・マン”が友人のひとりに納品されたことを知った。ちなみに、その友人のまた別の友人も最近このモデルを入手したと聞いている。

Rolex "Le Mans" Daytona 126529LN
SNS上でどれだけの個体を見たかや、あるいは二次流通市場で現在約30万ドル(日本円で約4700万円)の値がついていることはさておき、この時計は依然として極めて希少な存在だ。ある国際的な販売業者によると、同社が顧客のために確保できたのはわずか6本未満だという。実際に何本製造されたのか、正確な数字を知る者はおそらくいないだろう(それがロレックスの流儀だ)。だが少なくとも、多くはないことは確かだ。私がこれまで見た現代のロレックスのなかでこれよりも希少だと思えたのは、ルビー・デイトナだけだった。

Rolex Le Mans Daytona Yellow Gold 126528LN
Rolex "Le Mans" Daytona 126528LN
この画像はここ数週間、私のスマートフォンの壁紙に設定されている。

ロレックスがこの時計に下したいくつかの決定について、これを48時間身につけ、あたかも自分が世界でもっともホットな時計を手にできるVIPであるかのように振る舞っているあいだに、気がついたことがいくつかあった。そのひとつ目(これは多くの人が異論を唱えるだろうが)はシルバーのインダイヤルだ。ケースカラーに合わせてインダイヤルをゴールドにするのが、選択肢としては当然だったはずだ(例えば、私の個人的なトップ3に入る“ジョン・プレイヤー・スペシャル” Ref.6241のように)。だが私は、そうしなくて正解だったと思う。その理由は正直わからないが、HODINKEEのオフィスにいる全員が口を揃えて“シルバーのインダイヤルのほうが“しっくりくる”と言ったのだから。

Rolex "Le Mans" Daytona 126528LN
Rolex "Le Mans" Daytona 126528LN
サファイア風防にレーザーでエッチングされた王冠マークは、私が撮影したほかのどのロレックスよりも際立って見える。

オリジナルのWG仕様のロレックス デイトナ “ル・マン” Ref.126529LNと、YG仕様の後継モデルとの違いは少ない(もちろんケース素材とそれに合わせたアクセントを除けばだ)。その違いのひとつは非常に微妙で、気づいたことを自慢できないほどのものだ。代わりに才能あるデザイナー、マット・トンプソン(Matt Thompson)が「ベゼルの赤い“100”の表記が少し違って見える」と指摘してくれた。この“100”はル・マン24時間レースの100周年を記念してオリジナルのモデルで着色されていたものだが、確かに彼の指摘は正しかった。

Le Mans Daytona
ロレックス デイトナ “ル・マン” Ref.126529LN。

Le Mans Daytona
ロレックス デイトナ “ル・マン” Ref.126528LN。

もちろん、撮影に使用したストロボの光には多少のばらつきがある可能性がある。それでも同じカラーバランス、照明設定、その他すべての条件を揃えた状況で比較してみると、上の写真に写っているWG仕様の“ル・マン”の赤色は、RGB(レッド、グリーン、ブルー)のすべてのチャンネルにおいて若干弱めに見える。一方でYG仕様ではこれらのチャンネルがすべて強めに出ている。念のため色マニア向けに16進コードを紹介しておくと、WGは#e43d45、YGは#f9494bだ。これを色の違いを測定する指標であるデルタE値(ΔEは色の測定と比較に使われる指標)で比較すると、その差は5.28になる。ちなみに、純白と純黒のΔE値が100であることを考えると、この差はおよそ5%に相当する。

Le Mans Daytona colors
これは何だ、ロスコか? いや、左がロレックス デイトナ “ル・マン” Ref.126528LN(WG仕様)、右がRef.126529LN(YG仕様)の色の違いだ。

なぜだろうか? 私の推測では、おそらく同じ色の塗料を使用している。しかし両モデルのセラミックベゼルは、それぞれのカラーに合わせたゴールドのベゼルの上にセラミックが重ねられている。そして“100”の部分にはセラミック製の赤色がインレイされているが、その赤色層が非常に薄いため、下地の素材の影響を受けて色味が変化している可能性があると、少なくとも私はそう考えている。オフィスの何人かは、YG仕様のダイヤルの赤色も若干濃いのではないかと指摘していた。しかしそれについて定量的な証明はできなかった。

Rolex "Le Mans" Daytona 126528LN
この時計には、ほかにも楽しむべきポイントがたくさんある。私は長いあいだ、この時計を真剣に撮影する機会を得ようと努力してきた。そしてようやく、その写真を皆さんに共有できるときが来たのだ。今回は長々と5万400ドル(日本円で約800万円)の腕時計の価値を語るつもりはない。むしろ、スマートフォンの壁紙に最適な画像を紹介しよう(そのあたりのことは私に任せてほしい)。

最終的な感想は? 何人かの読者は、実際にこれらの時計のうち1本、あるいは両方を目にする幸運に恵まれたことだろう。実際、Instagramのユーザーから「最近日本で両方試してみた」と聞かされたほどだ。もしあなたにこの2本のうちどちらか1本を手にするチャンスが訪れたとして、仮に選択の余地がないとしても、手に入る時計は間違いなく“傑作”だろう。だが個人の意見としては、もし選べるならWG仕様を選びたい。私はYG製のスポーツウォッチを身につけるタイプではないからだ。とはいえ本当に見てみたいのは、以下に掲載するデザインのSS版だ。赤いベゼルの表記もロリポップマーカーも必要ない。ただ、かつてのRef.6240のようなケース、ベゼル、プッシャー、そして最も重要なインダイヤルのデザインに回帰したモデルが欲しい。それが叶うなら、2本テイクアウトしたいくらいだ。

いつもならここで、“詳しくはこちら”とロレックスの公式ウェブサイトへのリンクで締め括るところだ。しかしこの時計は、ロレックスの公式ウェブサイトには存在しない。

まだ注目されていない独立系時計師や日本未上陸ブランド、

時計愛好家にとって、注目のブランドやモデルを追いかけるのも楽しいものですが、あまり知られていないなかにも個性的で魅力的な時計が潜んでいます。編集部では日々、多種多様な時計に触れるなかで、埋もれてしまいがちなものや、これから注目を集める可能性を秘めたモデルを見つけることがあります。今回の記事では、まだ広く知られていないものや注目されていないものの、デザイン、技術、ストーリー性の面で特にエディターたちの印象に残った5本をご紹介します。

ローガン・クアン・ラオ(饶宽) ウーウェイ
BY MASAHARU WADA

2024年は、日本をテーマにした「刻(TOKI)」オークションで刻(TOKI)オークションでHODINKEE Japanがメディアパートナーを務めたこともあり、僕にとって日本の独立時計師たちにフォーカスする特別な一年となりました。僕は実際にオークションが開催された香港を訪れ、現地のコレクターや時計ディーラーたちと交流を深めたことで中国発の独立時計師や独立系ブランドについて、より知ることができました。中国にはアトリエ・ウェンや秦 干(Qin Gan)といったブランドがあることはすでに知っていましたが、個人的に以前から興味を惹かれていたのが、独立時計師ローガン・クアン・ラオ(Logan Kwan Lao)です。

中国南部の広州を拠点とするラオ氏は、独学で時計製作を習得した人物です。中国の時計師フォーラムで学び始め、ヴィンテージウォッチの収集するなかで自ら時計を作る挑戦へと踏み出したのだそう。「浅岡肇さんとは数回、直接お会いする機会がありました。彼は本当に親切で、インターネット上でさまざまな情報を惜しみなく共有してくださいます。浅岡さんのFacebookやXの投稿を通じて、多くのことを学びました」とも話しています。ラオ氏は、一部の部品をのぞいて、基本的にムーブメント、文字盤、針、ケースなど、時計のほぼすべての部品を一から作っています。

最信頼性の日本スーパーコピー時計代引き専門店!ラオ氏がアイスバーグ(氷山)と呼ぶムーブメント。潤滑剤を必要とせず、自己始動が可能で、均等なインパルスとロッキングを実現する特許取得済みのイコールプッシュ脱進機を搭載。

そんなラオ氏の最新作であるウーウェイ(WU WEI)をあるコレクターの好意で実際に手に取る機会がありました。この時計は、一見するとシンプルですが、細部に至るまで興味深いディテールが詰まっています。特に、裏返したときにその真価が現れます。

ムーブメントは、ラオ氏がアイスバーグと呼ぶもので、その名の通りケースバック上で氷山のように浮かび上がるデザインが特徴的です。このムーブメントには、特許取得済みのイコールプッシュ脱進機が搭載されており、潤滑剤を必要とせず、自己始動が可能で、均等なインパルスとロッキングを実現しています。

製造本数は年にわずか10本程度と非常に限られており、その希少性から実物を見る機会は滅多にありません。しかし、ラオ氏のような時計師がメイド・イン・チャイナのイメージを刷新する存在として登場していることは、今後の中国独立時計業界の可能性を示しているのではないでしょうか。

詳細は、ローガン・クアン・ラオの公式Instagramアカウントへ。

クリスチャン・ラス 30CP
BY KYOSUKE SATO

クリスチャン・ラスの代表作のひとつ、 CP30

特定のブランドやモデルというよりも全般的になるが、デンマークに出自を持つブランドが個人的に気になっている。多くの人にとってはあまりなじみがないかもしれないが、現行であればウルバン ヤーゲンセン、ヴィンテージであればエケグレン(Ekegren)など、実は個性豊かで魅力的なブランドが少なくない。今、おすすめするとしたら時計師クリスチャン・ラス氏の時計だ。数年前にHODINKEEでも取り上げているが、セーレン・アンデルセン、ヴィアネイ・ハルター氏、そしてフィリップ・デュフォー氏など希代の時計師たちのもとで腕を磨き、そしてパテック フィリップ・ミュージアムのマスターウォッチメーカーを経て独立。2020年に自身初の作品となるCP30を発表した(クリスチャン・ラス氏と時計の詳細はこちらの記事を読んで欲しい)。

発芽した葉からインスピレーションを得たというテンプ受けのデザインがユニーク。

なぜこの時計に注目しているのか? 彼自身も語っていたが、クラシックな天文台クロノメーターをほうふつとさせる時計であるところだ。筆者は以前からロービートで大きなテンプを持ち、ていねいに調整された古典的なクロノメーターウォッチが大好きだ。オメガのCal.30 T2 RG(262)、ゼニスのCal.135、ロンジンの天文台クロノメーター Cal.360などは昔からずっと憧れの時計であるが、ヴィンテージを普段使いするのは自身のライフスタイル的にはかなり難しい。古典的なクロノメーターウォッチへのオマージュが感じられる現代の時計は筆者自身が好きということもあるが、高品質であることの一種の指針になるため、ぜひともおすすめである。クリスチャン・ラス以外にもパスカル・コヨン氏の時計も気になっているが、こちらはまだ実際に見たことがあるわけではないため、近いうちにぜひとも実機を目にしてみたいと思っている。

ルイ・エラール レギュレーター ルイ・エラール × ヴィアネイ・ハルターⅡ
BY YU SEKIGUCHI

ルイ・エラール自体は1929年創業と、スイスでも老舗の時計メーカーだ。高品質かつアフォーダブルな機械式時計にこだわり、日本でも大沢商会によって長年展開されている。近年はその価格を維持するための大量生産と、年々高価格化するスイス時計のトレンドが災いしその勢いを無くしていた。時計趣味を始めて長い方には懐かしいブランド名かもしれないが、始めて知る方も多いだろうと思い今回名前を挙げてみた。

実はここ4年ほど、マニュエル・エムシュCEOの指揮のもとで方針に大きな変更があり、より少量の生産かつ特別なコラボレーションモデルをアイコンとしたブランドへと生まれ変わっている。アラン・シルベスタインやステファン・クドケ、セドリック・ジョナーらファンにはたまらない時計師たちと次々に取り組みを実現するのは、マニュエル氏の手腕に他ならない。彼は、20年以上前にハリー・ウィンストン、ジャケ・ドローでそのキャリアをスタートさせたのち、自身でロマン・ジェローム(RJとも呼ばれていた)を設立。独創的な時計づくりとクリエイティビティあふれるコラボレーションを特徴としていた。

109万4500円(税込)。ヴィアネイ氏のデザインエッセンスがこのプライスで味わえるのは、またとない機会かもしれない。

ヴィアネイ・ハルター氏と語る、マニュエル・エムシュCEO。実は近年のコラボーレーションウォッチの先駆けだ。

コラボレーションというのは考える以上に三方よしの形にまとめることが難しい。それを独自色の強い独立時計師と実現してみせるのは奇跡に近い。が、このレギュレーター ルイ・エラール × ヴィアネイ・ハルターⅡは、スチームパンクの世界観にインスパイアされたリューズや針、ベゼル上のリベットなど、ヴィアネイ・ハルターを感じるディテールを確かに宿しつつ、ケースデザインやレギュレーター機構を軸にあくまでルイ・エラールであり続けている(価格も十分に彼らのゾーンに収まっている)。

僕はRJ時代からマニュエルと親交があり、彼のつくる時計が大好きだ。今でもタイタニック DNA スチームパンクを所有しているし、他に替えられない魅力を宿すという意味で、彼は一流の時計プロデューサーだ。CEOによって時計ブランドが様変わりする例は多くあるが、ルイ・エラールは今、その好例の一番手に挙げられるだろう。心が踊るようなマニュエルの時計に、ぜひ注目して欲しい。

セイコー アシエ(と、20世紀終盤のユニークなセイコー)
BY YUSUKE MUTAGAMI

まだあまり注目されていないがおすすめしたいというテーマを聞いた時に、ふと頭に浮かんだのがこの時計だった。クレドール ロコモティブの復刻を聞き、オリジナルモデルについてリサーチをかけていたときに発見したブランドで、セイコー アシエという。1979年に約1年間だけ販売され、当時のクレドール(CRET D'OR)ブランドとともに現在のクレドール(CREDOR)へと再編されたという話があるが……、公式サイトからもその存在自体が削除されており定かではない。貴金属を素材とする高級腕時計を目指した同時期のクレドールに対して“ステンレス”を素材とした高級腕時計として誕生したこともあってか、アシエのデザインはクレドールの華やかさに対して控えめで、慎ましい。ケースの造形も直線が多用されていて、シャープさが際立つ。しかしステンレス製とはいえ高級時計を謳うだけはあり、ケースの造形は高級感があり堅牢、写真のモデルではメッシュブレスもほぼ遊びがなく、密に編み込まれている。以前、何も言わずにマーク・チョー氏に手渡した際には、その重厚さからプラチナかと確認が入ったりもした。

そして何よりの推しポイントは、(すべてのコレクションがそうとは断言できないが)同時期のクレドール同様にジェラルド・ジェンタデザインの時計であるということだ。まだその目で確認できていないが、裏蓋の内側には“Gerald Genta Swiss”の刻印が入っているという情報も得ている。残念ながらロコモティブは手に入れられなかった僕にとって、この時計が唯一のジェンタウォッチとなっている。

裏蓋下部にある、“CASING IN SWITZERLAND”の刻印が見えるだろうか?

今回はアシエを例に挙げて話をしたが、1970年代から1990年代のセイコーにはまだまだ注目されていないユニークなモデルが数多くあると思っている。今年未来技術遺産に登録された1978年のセイコー クオーツ シャリオもそのひとつだし、90年代のセイコーSUSにもとんでもない数のバリエーションがある。先日SUSでブレスレット一体型のパーペチュアルカレンダーモデルを見つけたが、IWC インヂュニアのような雰囲気もあって即落札した。また、ちょっとポップなところとしては90年代のアルバも面白い。この時期は定期的にディズニーコラボも行っていたが、(手放してしまったが)そのなかにはレベルソのようにケースが反転するレクタンギュラーモデルもあったりした。それぞれの値段も手ごろながらとにかく混沌としていて、この時期のセイコーは探しているだけで楽しくなる。

ただ、このアシエの電池交換のために街の時計店を訪れた際、古いセイコーを保有するにあたっての注意喚起を受けた。セイコーは生産終了後の部品保有期間を通常7年、高級ラインで10年と定めている。海外での人気の高まりもあり、この時期のセイコーの修理依頼も増えたらしいが、場合によっては対応そのものが難しいという。そのことを十分理解し、付き合っていければと思う。

アウェイク ソンマイ
BY YUKI MATSUMOTO

最近のマイクロブランド業界では、エナメル、ストーン、漆といった天然素材を使ったダイヤルが注目を集めている。その人気ゆえに市場はやや飽和状態に感じられるものの、まだまだ知られていない天然素材を使った手ごろなモデルも存在する(最近HODINKEEで取り上げたデニソン、バルチックなどがいい例だ)。そして私もその動向に注目しているひとりだ。私の時計収集のモットーは“機能はシンプルに、デザインは派手に”なので、3針かつ質感のあるカラーダイヤルを見かけると、ついついスペックページを開いてしまう。

口コミ第1位のオーデマピゲスーパーコピー代引き専門店そんななか見つけたのがAWAKE(アウェイク)だ。彼らが手がけるSơn Mài(ソンマイ)コレクションは、ソンマイ(天然漆)技法と純銀箔を組み合わせた、時計製造では前例のないアプローチが特徴だ。

ソンマイとは、ベトナムの伝統的なサンドラッカー技法のひとつ。何層にも天然ラッカーを重ね、ていねいに磨き上げることで鏡面のような光沢を生み出す技法であり、ベトナム文化を象徴する芸術でもある。さらにそこから純銀箔のギルディングを組み合わせることで、深みのある表情を生みだしている。これらはすべて10〜15時間以上をかけて手作業で製作。なおケース径は39mmで、内部には約70時間のパワーリザーブを誇るラ・ジュー・ペレ社製自動巻きCal.G101を搭載している。

ソンマイダイヤルも美しいのだが、夜光の技法も個人的には好きなポイントだ。AWAKEの夜光デザインは、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃(いんえいらいさん)』という著書の一部、“光と影の対比”から着想を得ている。同著では、美しさは物との繊細な関係性や、その神秘性を保つ光の戯れに宿るとされている。ソンマイモデルでは、針やインデックスのトップに夜光を塗る従来の構造ではなく、ダイヤルの奥行きを際立たせるよう、薄く精密に加工されたスーパールミノバ BGW9をベースに、ファセット加工とポリッシュ仕上げを施したスティール製のパーツを取り付けているのだ。

1950ユーロ(日本円で約32万円)という価格も、これだけの技術と美しさを詰め込んだものとしてはお手ごろといえるだろう。AWAKEは天然素材ダイヤルが注目を集める昨今のマイクロブランド業界のトレンドをうまく捉えており、これから注目を集める可能性を大いに秘めている。今後の展開に期待したい。